このエントリーをはてなブックマークに追加
haradasecret21


バンダイナムコエンターテインメントの原田勝弘氏が出演するトーク番組「はらだのばぁー」にて、原田氏が統計データとバランス調整について語りました。

原田氏は以前から、鉄拳ではユーザーの対戦データを取得したデータ基づく、統計的なキャラランクが存在することを明かしていましたが、今回の動画ではゲスト陣にその情報を全て公開し、それをもとに格闘ゲームのバランス調整について熱く語っています。

・統計データで勝率が54%以上のキャラは、調整ミスした強キャラ。
・誰が使っても強いのはダメ。
・一般のプレイヤーは普段、統計データの上位キャラに負けているのに、大会を見るとそこで勝ってるキャラをもとにTierリスト(キャラランク)が語られる。
・大会で勝ってるキャラを弱体化させて、めったに見ないキャラを強化する方が良いゲームだと言われる時代になっている。
・人間は感情で動いているので、真実を追い求めても仕方ない。統計に答えはない。

といった話などをしています。

原田氏は早稲田大学で心理学を専攻した経歴を持ち、今では鉄拳シリーズの顔とも言える存在です。
Twitterでときおり受ける罵詈雑言が、膨大な統計データよりも大きな意味を持つといった話もしています。
話の上手さやその知見もあってか、他社の開発者達を相手に講演を行うこともあるそうです。
今回の動画は38分と少々長い動画ですが、原田氏のこれまでの経験を踏まえた濃厚なトークになっており、最後まで見ると色々と勉強になるのではないでしょうか。


原田氏のプロフィール(Wikipedia)





以下、動画で原田氏が語っている内容を一部抜粋したものです。


【鉄拳は数百万人の膨大な統計データを取っている】
・鉄拳は競技性となかなか言って貰えないタイトルだった。
・ゲームのキャラバランスについて言われるようになった。
・鉄拳7はユーザーに最初に承諾して貰って、オフラインのデータまで取得出来るようにしている。
・鉄拳7は発売から4年で現在700万本売れていて、アクティブユーザーはその1/3近くいる。
・鉄拳7では、数百万人いるユーザーのプレイデータから、各キャラクターの勝率や使用回数を、プレイヤーレベル帯別の統計も含めて、様々な統計情報を作っている。


【ネットで強すぎ言われてもそうとは限らない、でも勝率54%いくキャラは調整ミス】
・ネット上で「強すぎ」と言われているキャラは実際のところ勝率が低かったりする。
・ファーカムラムは26位、ジャック7の2つ下。ザフィーナとエディは結構上。
・数百万のデータで統計を取ると50%に近づくが、勝率が54%以上いくキャラは異常。調整ミスしたキャラはリリースした月に54%いってたりする。
・スティーブは鉄拳プレイヤーが100万人の世界だとすると、2000人しか使える人がいなかった。だから勝率が低かった。そういうキャラは大会で猛威を振るうだけで、普段はそうでもないからいい。大会で優勝したから最強なんだと思って自分が使うと弱い。
・リロイは、大会で強くて自分で使っても強かった。誰が使っても強いというのはまずい。正直リロイはバグってた。ファーカムラムもバグってた。
・Twitterで「原田は分かってない」とか色々言われる。ゲームバランスを良くするには、明日から一八だけにすればいいというのは、極論を言ってるだけ。みんなの求めてる本当のバランスというのはそんな意味じゃないことは分かってる。得手不得手があって全体が競えるのが理想だけど、なかなか実現できない。


【各メーカーのゲームバランスの取り方に変化が起きている】
・ゲームバランスについて、色んな開発メーカーで圧倒的な変化が起きている。昔はインターネットもないゲームセンターレベルで大会が行われてもアーカイブもなかったりした。それが今や配信で行われるようになった結果、大会で起きていることの印象論が全てを支配し始めている。
・上手い下手関係なく全員同じ額のお金を払ったお客様で、85%がカジュアル層がいないと鉄拳もストリートファイターもバーチャファイターも成り立たない。
・メーカー側で持っている統計データの上位キャラにボコられているのに、大会を見るとトッププレイヤーという超人達による戦いによって起きた超例外がTierリストとして語られてしまう。
・そうすると、統計を取っているからバランスのいいゲームが出来るというわけではなくなってくる。もはや感情論に近い。いつも大会に出てくるとか、いつも大会で勝ってるとか、この言論を印象操作した方が良いゲームだと言われる時代になっている
大会でずっと勝ってるキャラをナーフ(弱体化)したり、なかなか出てこないキャラを強くしてたまたまTOP8に入った時に、良いゲームだと言われるならそっちを優先した方がいい
・大会という特殊なシチュエーションで争われているものは、この(全体の)統計に表れない。世論を動かす印象論を移動させた方が評価が得られる。


【強キャラの政治】
・もしも、この統計を世に出すとこれがTierリストになる。そうならなくても、これが真実だと思ってしまう。でも人間は感情で生きているので、感情のないリストになっている。
・真実を求めても仕方ないという事を気づかないとダメなので、Twitterをやっている。罵詈雑言が来るけど、あれは重要。何億もの対戦回数で得たデータより、「あのキャラいつまでクソなんだよ」の方がよほど響く。これはイカンと思う瞬間がある。
・ギガースは実はめっちゃ勝ってる。今3位。1位は巌竜。
・Twitterのログとかも検索して、キーワードを抽出して統計を取ったら面白いことが分かった。キャラクターごとにコミュニティが少し違う。〇〇っていうキャラのコミュニティは、真実に気づき始めてる。
・ギガースは一般的に強いけど、強くしても弱いと言われる。それは使う側の客層のカジュアルさとかが影響して、もっと強くしてと言い続ける。どんどん強くするけど目立たないので、「ギガースかわいそう」という人もいれば、ほくそ笑んで勝ってる奴もいる。
・逆に目立ちすぎるとナーフされる。××のコミュニティ層はヤバくて、それを知ってる。××は結構強くて、勝率もぐっと上がってきた時に、使ってる人が「強すぎる」とか「すごく勝てました」と言うのに黙ってる。「(強すぎって)言うな」「(本当は強いって)言うな」を互いに言い合ってて、全部統計で見えてて、SNSでも「黙っておきましょう」がすごい。自分達で騒ぐと損をするから、黙れ黙れのオンパレードをやってる。


【統計に答えはない】
・(統計データは)カプコンも多少やってると思う。アークにも『これぐらいやった方がいいですよ』って見せた。ただ『そこに答えはないんです』と言ってる。
・いろんな開発会社に呼ばれて、講師みたいなことをする。統計の話をしたりすると、みんな「なるほど!」って言ってくれるけど、最後に(自分が)必ず言うのは『そこに答えはない。統計に答えはないですから』。
・これ(統計データ)を解説なしに出すと、聖書にしちゃう層がでてくる。聖書にされても面白くない。ゲームは感情でやるもの。新しいバージョンが出ると2週間後くらいにみんながTierリストを作ってる、あれが面白い。そこにこの統計を持ってこられても面白くない。
・(データ上の)究極で戦ったらこうでしょ?というのは、ある意味選手に失礼。そんなのコンピューターでやるのと同じ。その人がそれを引き出してるということを見逃して欲しくない。
・お客さんそれぞれに越えられない壁があるので、誰がメインターゲットなのか言えない。それが作る側の苦しみでもある。