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2020-08-24 (2)


スト2生みの親として知られる元カプコンの西谷亮氏&船水紀孝氏が、初めてストリートファイターを3Dテイストで作った格ゲー「ストリートファイターEX」を開発した時のエピソードや、格ゲー開発への思いを語った昔の映像が、YouTubeにアップロードされています。

最近のeスポーツ前提の格闘ゲーム開発にもそのまま当てはまるのかどうか分かりませんが、西谷氏と船水氏はゲームクリエイターとして、それまでの2Dから3Dテイストの新しい格闘ゲームを作るにあたって意識していたことを語っています。







【3Dにした理由】

西谷
「ポリゴンでの2Dテイストを持った最初の作品にしたいというイメージがあった。」
「ちょうど鉄拳3が出た頃だったと思う。すごいなぁ・・・って思ってたけど、こだわってみたいというのがあった。」

船水
「鉄拳とバーチャが二大3D格ゲーになってて、そこに入ってもユーザーがかぶるので仕方ない。」
「2Dのユーザーを引っ張ってくるような作品。」

西谷
「そんなに人数がいるわけじゃなかったので、同じ土俵で勝負したら分が悪い。だったら僕らの得意分野で新しいかつこだわったことをやってみようというのがあった。」




【3Dならではのメリット】

西谷
「上手くモーションを作れればという大前提で、単純にかっこよく見せられる。2Dの絵を1個のパターンで作るよりも、3Dの方が楽。少ない労力で最大限の効果が得られやすい。」

船水
2Dの絵は、絵描きさんの能力にものすごく左右される。
「上手い人が描くと、ものすごく楽。作るのも1週間あれば余裕でプレイヤー作れるみたいな状況。でも、あまり上手でない人が作ると、いつまでたっても『これもう1回やってくれる?もう1回描きなおしてくれる?』って言わなきゃいけない。」

西谷
「当時、それなりに3Dですごいのは出てた。どっちかというと、力押し系のが多くて、絵的なタッチが出るというところに至ってなかったと思う。各社によって技術は違うが、本質的にはあまり変わってなかった印象があった。」



【3Dへの挑戦】

西谷
「本当に出来るのかな?というのがあった。そういう意味でやってみたかった。」

船水
「カプコン的にやれる人間がいなかったというのもある。ビビってたのもある。西谷君がやるなら世間も納得するしいいかって。」

西谷
「正直怖かった。出来るのかなって。最初、波動拳を出すという時に怒られた。『こんなもの出るわけない』って。」
「当時、そういうものにポリゴンとか演算処理を使う余裕がなかった。」

船水
「ないから鉄拳になってたと思う。」



【空中判定】

西谷
「僕の中では一緒。既にダッシュくらいから考えていて、やりたかった。だけどすごく危険になるのが分かってたので、どうしようと思いながら時が過ぎていた。」
「ダルシムで空中当たり(判定)が残ってたりするのもそれの名残。」

船水
「Xにそういうのが入ってた。空中2段とか。」
「これで持ち上げれば、その後空中で入れられるみたいな。」

西谷
ああいうシステムは最初から、すごく危険な匂いがプンプンする。安易に入れるのは危ない。

船水
「画面端が決まってるからね。」



【画面端が存在しない理由について】

西谷
「絵的な表現方法として、3Dって誤魔化しにくい。そうなると必然的に無限フィールドになる。それか責任をもってきっちり端を作るかのどっちか。ゲーム性というより、3Dからくる絵的表現によってそういう方向になっていった。EXでも本当は画面端を作りたかったけど、何もないところでぶつかるのは不自然。だから無限だけど一応端はあるという中間みたいなシステムにした。」



【世間の評価】

西谷
「もともと2D格ゲーが好きなグループの何割かが支持してくれてる印象だった。大体そんなもんだろうと思ってたけど。」

船水
「コンシューマーとして出したら、かなり支持されてたと思う。当時格ゲーユーザーはある程度被ってると思ってたけど、コンシューマーのユーザーとアーケードのユーザーはほとんど被ってない。」
「アーケードがすごい好きな子に、なんでやらないの?って聞くと『コンシューマーだから』って返事が返ってくる。たしかに入力の感覚が機種によっては変っちゃうのがある。」



【ガードブレイク】

西谷
「僕の中ではガードというのは、ずっとテーマだった。ガードって言うのはある意味無敵。必殺技で削られたり投げに弱かったりはするけど。」
ガード自体が強すぎるというのもあるし、上手く僕の中で投げとか打撃とかの三角関係にガッチリはまってるイメージがなかった。もうちょっと何かあるだろうって。その中で考えたのがガードブレイク。でもあまり上手くいかなかった気がする。」

船水
「このスタイルの格ゲーを作ってから、そこはずっとテーマだった。Xでは中段技みたいなのを作って、しゃがみガードは崩せるとか作ったりはした。」



【スーパーキャンセル】

西谷
「ゲーム的な面白さとして、ガードブレイク以外にもう1個何か欲しいといった時に、キャンセル新次元を考えないといけないということで、正常に考えてそうなった。」
「最初は思い付きで、よく考えてみると結構面白い要素あるよなって。」

船水
「どうせズルい駆け引きを考えたんでしょ?」

西谷
「そうです。最初は単純にキャンセルで繋がればいいやって思ってて、途中で当てた時のみキャンセルできるルールを作ったことで、ガードの後の反撃とかこれもあるよね?って。結構いけるなと。」




【エクストラキャンセル(エクセル)】

西谷
「コアな使い方をすると、相当試合の流れを変える。防御にも使えるし。」
「出発点はまず単純に色を入れようというのがあった。もともとEXは2D好きな奴のコアなとこを取ってるゲームだけど、EX2ではもうコアな奴しかやらないよね?っていうのが当然分かってた。その人達をターゲットにしちゃっていいだろうというところから、じゃあもうやっちゃえと。」
「上手いプレイヤーを呼んできてやらせるんだけど、最後までもめてたのがエクセルtoエクセル。危険だからエクセル終わったら絶対あがらないようにしようとって意見もあったし、それだとか可能性がゼロになるのは面白くないから残しておこうっていう。別にエクセルからエクセルに繋がずに他の繋ぎ方もあるから残しておきたいというのもあって、かなり最後までもめてた。」

船水
「西谷君のスタイルとしては残す。可能性をなくすのが嫌うもんね。」

参考文献
https://kakuge.com/wiki/pages/%E3%82%A8%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%83%AB



【エスカレートしていくシステム】

西谷
「エクセルがスタートで、細かいルール作り。同じ奴はあまり減らないとか、ガードブレイクをキャンセルで出しちゃっていいんじゃないかとか。」

船水
ヤバそうなとこが面白そうなとこだから、そこを削ってしまうと面白くなくなってしまう。
「バランス、バランスとか言うけど、バランスを取った格ゲーなんてすごくつまらないはず。

西谷
「丸くなっちゃうと面白くない。尖ってて凹んでるとこもある上でバランスが取れるのが一番面白いと思う。」

船水
「皆が頑張ってバランスが取れたというのがきっといいと思うんだけど、そうじゃなくて最初からバランスが取れたようなプレイヤーを作ってしまうと『これどれでも一緒じゃん』って。何個攻め手を持てるとかという事だと思う。」
「だいたい○○タイプってプレイヤーは分かれる。その組み合わせであれば、プレイヤー人数の掛け合わせじゃなくて、物理的にこういうタイプにはこういう攻めや守りが出来るというのを作っておいてあげる。それでどれが一番得意っていうのを残しておかないと。それでいてグラフィック的に一番派手そうな技とかが一番得意であるのが一番いい。」
それを作っておけば、あとはプレイヤーの腕で何とかしろみたいのを何個仕込んでおけるか。



【EX2 plusを作るにあたって】

船水
「家庭用前提に作ってる。」

西谷
「EX2はマニアックな印象があって、それを継承しつつもうちょっと派手な、楽しめる部分(CPU戦とか)を意識して作ってた。」

船水
「コンシューマーユーザー側にやりやすい調整をしたのかなと思う。」



【ボーナスステージ復活】

西谷
「楽しんで貰おうと思って作った。案は色々あった。ビルの高さくらいに積んだ樽を上から全部たたき割るとか。絵的に表現できないだろうと。」

船水
「ずっと対戦ツールで来ちゃってた。格ゲーってゲームである以上はそういうものを全部なくしちゃうのも良くないし、物足りなさを感じちゃう。」



【EXシリーズを作ってきて】

西谷
「3Dだろうが2Dだろうが同じ。対戦ツールがあって駆け引きが存在する。鉄拳やバーチャもゲーム性は違うけど、そういう意味では同じ。面白いゲームはいつまでは残る。」